1日目のカレー

とあるウェブ編集者が、仕事からは一歩距離をとって「一筆書き」する場所。熟成前の「1日目のカレー」的な考えを書き溜めていきます。ビジネス・テクノロジー領域から思想・哲学領域まで、幅広く仕事しています。

人文書を読むためには、「筋力」が必要だ(千葉雅也『意味のない無意味』書評)

久しぶりに人文書を読む。

 

カチカチの理論書ではなく、エッセイ集ではありますが、人文書人文書

最近使っていなかった「筋力」が必要で、苦労しました。

 

ビジネス書は、基本的に誰にとってもわかりやすいように書かれています。具体性も豊富です。だから、一見分厚くても、すらすら読めてしまいます。

 

一方で人文書は、かなりハイコンテクストに書かれていることがほとんどです。背景知識がないと解像度は上がりません。

また、抽象的な話が大半を占めるため、自分で具体例をイメージし、腹落ちさせていく必要があります。

それはまさに格闘技のようでもあります。脳細胞をフルに動かして、全力でテキストにぶつかっていく。

 

もちろん、解像度が100パーセントになることはありません。せいぜい、20パーセントが30パーセントになる程度。

 

けれど、少しでも競り返すことによって得られる快感、そして世界の真実に一歩近づけたと思える全能感が、癖になるのです。

 

今回『意味のない無意味』を読んだときも、そうした悦楽を味わいました。

しかし、学生時代に比べ、そうした筋力が衰えてしまっている気もします。

毎日たくさんのWeb記事を流し読みし、十分に文章を咀嚼する習慣が減ってしまったからでしょうか。

 

少し危機感を覚えたので、量より質を重視し、しっかりとテキストを味わう習慣をつくっていきたいと思います。

 

(本の内容自体は、非常に面白かったです。芸術批評などはハイコンテクストすぎてついていけないものもありましたが、理論立った論説や、短いながらも示唆に富むエッセイなど、さすがでした。またそのうちじっくりと読み返したいです。)